ラオホ(Rauch)とは、ドイツ語で「煙」を意味する黒ビールの一種です。見た目はポーターやスタウト同様、濃い黒色をしていますがそれらが上面発酵(エール)であるのに対しラオホは下面発酵(ラガー)の仲間です。
ビールの製造において欠かせない麦芽は、「乾燥」という工程を経ますがそのときの温度で完成したビールの色がほぼ決まります。麦の種そのものはデンプンが糖に分解されておらずビール作りに不向きのため、水に浸して芽を出させる「麦芽化」を行い麦芽にします。そのままだと種がどんどん成長してしまうため、生育を止めるべく乾燥させ、保存に適した状態にします。大手ビールメーカーではこの工程を自社で行いますが、マイクロブルワリーでは一般的にこの作業は行わず、完成した状態の麦芽を仕入れています(多くは輸入品)。
乾燥工程において温度が高いほど焦げたような黒い色になっていき、その色合いが最終的なビールの色にも影響します。現代では熱風で乾燥させる方法が広く用いられていますが、18世紀の産業革命までは天日で乾燥させたり、直火で炙るような方法が使われていました。直火で炙ると、独特の香りと風味が残ります。ラオホビールは、主にブナの木の薪やチップを使って燻製された麦芽を使ったビールなのです。この麦芽のことを「スモークモルト」や「ラオホモルト」と呼んでいます。
実際に飲んでみると、標準的な黒ビールにはない燻製の香りを楽しむことができます。ラオホはラガースタイルですが、スモークモルトを使用したエールスタイルのスモークエールを醸造しているブルワリーもあります。しかし日本のクラフトビールでは主流のスタイルではなく、ラオホやスモークエールを仕込んでいるブルワリーは決して多くはありません。一部のドイツ系ブルワリーでは定番商品として出していますがほとんどは限定醸造の商品です。気になる方は、見かけた際にぜひ味わってみてください。
337 Aleでこれまで取り扱ったラオホの一例
▲富士桜高原麦酒 山梨県南都留郡富士河口湖町
商品名:ラオホ
アルコール度数:5.5%
▲忽布古丹醸造 北海道空知郡上富良野町
商品名:煙もたけなわ
アルコール度数:5%